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2007年10月

2007年10月31日 (水)

TSUMORI CHISATO展

毎回展示会シーズンになると、TSUMORICHISATOのDMが送られてくる。ウチの郵便受けを開くと、ぐちゃぐちゃと詰め込まれたチラシを引っ張り出して、その間から、どうでも良いどこかのお店の案内を取り除くと大概後は光熱費の請求書だ。間に映画の試写状が入っていれば、その日はラッキーという位。今時手書きの手紙をわざわざよこして来る風流な人はそうそういない。郵便受けは、メールを定着させた情報社会のせいで、すっかり退屈な箱となってしまった。ところが、郵便受けを開くと、チラシや請求書の間に、年に2回、TSUMORICHISATOの展示会案内が入っていることがある。とてつもなく退屈な葉書や封筒の間に紛れ込んだそのDMを見つけると、まるでアリスが不思議な国への扉を見つけた時のように、ワクワクするのだ。時には森を彷徨う女の子だったり、時には雲の上で踊る天女だったり、泡と戯れる人魚だったり。まるで『赤ずきんちゃん』や『天の羽衣』や『人魚姫』など、子供の頃読んだ数々の童話を思い出すような絵が描かれている。そのシーズンのテーマだ。年甲斐も無く、私はお伽の世界に引き込まれて、郵便受けの前でDMを手にしばらくの間ジッと立っていることもある位だ。今回、2008 春夏コレクションのテーマは…。女の子版『浦島太郎』。女の子がクジラの飛行機船に乗って、大海原を悠々と渡る。大きな蛸に連れられて、深い海の中の竜宮城を巡ることになる。貝やヒトデ、亀や魚、泡や真珠、珊瑚や昆布、蟹やタツノオトシゴ…。たくさんのお友達が出来きる。鱗や貝殻でできたドレスを着て、珊瑚の紅を塗ってと、お粧ししていると、海老クンが、真っ赤なハートをプレゼントする。どうやら女の子に恋をしてしまったようだ。女の子は顔を赤らめて、幸せいっぱいに微笑む。蛸さん、連れて来てくれてありがとう…。一枚一枚、展示されているワンピースやトップス、パンツや小物を手に取って見ていると、いろいろな物語が読める。なんて楽しいんだろう。毎回思う。こんなお洋服を着たら、玉手箱を開いてもきっと年はとらないだろう、って。(by Anne)
ツモリ2008S/S
今回のコレクションで、特に気に入ったのが、蛸!蛸のプリントや、蛸の靴、蛸のアクセサリーなど。蛸の模様なんて、今まで見た事がない。この突拍子もない登場人物の、ちょっと間延びした感じが、かわいい。真っ赤な蛸の靴は、是非購入したい。

2007年10月30日 (火)

酒の味

ワイン、ワイン、ワイン、ワイン、たまに少しだけビール、という私。しかし昨日は日本酒を飲んだ。先日、ピンポーンとベルが鳴り、出ると黒猫だと言う。ドアを開けると日本酒を差し出された。クール宅急便だ。それは高知県佐川町から、「里便りです」と、ウチの菩提寺の和尚様が届けて下さった司牡丹のお酒。『深尾』という銘柄のものだ。この純米大吟醸原酒は、司牡丹の最高ランクのお酒のさらに最高の部分だけを取って、最高の貯蔵法を施し、一本一本おり引きを行なった、究極のお酒、という代物なのだ。日本酒に関して詳しくはないけれど、冷やして頂くと、洋梨のような香りがポワンと繊細に口の中に広がって、うっかり2〜3合飲んでしまう位、美味しいのだ。和尚様が、このお酒をこうして「里便り」と届けて下さるのには、訳がある。関ヶ原の戦いの勲功ということで、山内一豊から、恐れ多くもウチの先祖が佐川領一万石を預かったそうだ。それが深尾和泉守重良という人で、私の曾×13祖父にあたる。この人のお抱え酒屋が、司牡丹の遠祖にあたるそうで、「深尾」の名を冠してこのお酒を造ったそうなのだ。今回母が、日本に来ているということもあっての黒猫便。先祖を讃えた乾杯の意味も含めて和尚様がこうして末裔に届けて下さるお気遣いは、味わえる喜びも当然伴って、嬉しいばかりだ。うっしっし。ところで、この黒猫便におまけが入っていた。同じく司牡丹の純米大吟醸だが、「槽掛け雫酒」というものも数本!パッケージングで味の善し悪しを、味わう前から推測してしまう悪い癖から、銀色の箱を見るなり、早速「美味しそう」と呟いた。しまった!と思った。先入観が入るとちゃんと味をジャッジできなくなるかもしれない。その日は頂かないで、先入観が消える頃を待つことにした。3日ほど冷蔵庫で眠らせて、昨日、そういえば、と思い出して味わってみた。これはこれは!とろーりとしたビロードのようなティスト。ワインの酸味と渋味に慣れっこになっている私には、まるで、といっても経験はないが、ふわふわの雲の上に横たわるような感じだった?!本当は母宛だったのだけど、私にこっそり「適当に言い訳をして」好きなだけ取って、と和尚様がおっしゃって下さったのを真に受けて、全部頂いてしまおうと本気で思った。母は飲めないから、人に差し上げる分を除いた、全部を。しかし、そうだった。私以上のお酒好きが、日曜日、東京に到着するんだった。儘父の喜ぶ顔を思い浮かべると、独り占めは到底できない。(by Anne)
槽掛け雫酒

2007年10月24日 (水)

魚の味/その2

つづき。ケープ・コッドのビッグ・ハウスで、ディナーにチェコ人叔父さんがムツを作ってくれた時の事だ。ヴィッキーとは、私の父の弟の妻で、要するに血の繋がりはない叔母。カナダ人でスラリと背が高く、お転婆だけど相当なお嬢さん育ちだったと思う。3年振りに会って、髪の毛の白髪がやや目立つようになったが、お品の良いお転婆加減は未だ衰えていなかった。ディナー・タイムは必ずみんな揃って食卓につく。大勢で囲むテーブルはとても賑やかになる。彼女の横に座ると滑舌は良いけど目が回る程早口な英語で話しかけられ、話の内容が分かると楽しいけれど、半分しか理解できないと、なんともはっきりしない笑みを浮かべるハメになり、主人に笑われたこともあった。食事当番は日替わりで、作りたい人がつくることになっていたが、大概チェコ人おじさんだった。その晩も彼が担当。しかし魚が上手く焼けるか、温かいうちにサーブできるか、冷めてしまわないか、などを必要以上に心配して、ナーバスだ。第1回目にオーブンで蒸し焼きにしたムツが配られると、チェコ人おじさんは早く食べろと私たちを急かす。ヴィッキーは、きっと芸達者なのだろう。ゆったりとした手つきでナイフとフォークを動かし、ムツを口に入れるが、ものすごい早口でムツの感想を述べている。一体どうやったらそんな器用な動きが出来るのだろう。しかも、食べ物が口に入っているというのに上品に、なんて。「うーん、とても美味しいわ!去年ムツを作ってくれた時よりも腕をあげたんじゃない?」。私もヴィッキーに頷いた。中までしっかり火が通っていて美味しい。しかしチェコ人おじさんは、第2回目のムツの準備で大慌て。聞いてもいない。3分数えて、オーブンからムツを取り出した。今度はもっと上手くいったに違いないと言いながら、みんなに配り、また早く食べろと急かした。しかし今度は生焼けだった。ところが隣でヴィッキーが「うーん、最高だわ!とっても美味しい!さっきのよりももっと上手く焼けたわね」と言った。嘘でしょ?私は心の中で驚いた。ああ、そうだ。これが上流階級の人のマナーなんだわ。酸っぱいラタトィユを食べたボッちゃんみたいに。そうと分かっても、私はおかわりはしなかった。
人に出された料理で、不味く仕上がってしまったものは、最高の味と賞する。こんなマナーがあるみたいなのよ、と母にヴィッキーの話をした。すると母は「あら、そうでもないみたいよ」と私の悟りの価値を下げ、「少なくとも、魚の味に関しては」と付け加えた。日本人はお刺身も焼き魚も好きだけど、生なら生、焼くならしっかり焼く、が良い。そうでないと美味しいと思えない。でも、西洋では、特にフランス料理では魚をお肉みたいに生焼けにするのが上手な焼き方で、フランス人はそれが好きなのだと、母は言う。だからヴィッキーが2回目のムツを絶賛したのは、マナーではなく、案外本音だったのかもよ、と。なるほど。魚の味って難しい。(by Anne)

カナガシラ
ノルマンディーの市場で、赤い魚が目についたから買ってみた。カナガシラという魚なのだそう。母と私は塩焼きにしたい気持ちをグッと堪えて、フランス風にオーブンで蒸し焼きにしてみた。気持ち生焼けにして。淡白な味に最初は物足りなさを感じたが、次第にものすごく美味しいことに気付いた。東京に戻った今も、思い出しては唾を飲んでいる。シャブリ・プルミエ・クリュと共に。

2007年10月23日 (火)

魚の味/その1

小津安次郎の遺作に『秋刀魚の味』という作品がある。彼の作品のベースともなる、お決まりの物語。娘がお嫁に行く話だ。ところが秋刀魚はどこにも出てこない。むしろ『ウィスキーの味』とした方が分かりやすいくらい、登場人物はウィスキーばかり飲んでいる。(現に、フランスでは『酒の味』というタイトルが付けられているわけだけど。)ラストシーンで、笠智衆が、娘の結婚式の帰りにバーでウィスキーを飲む。バーのママが、「どちらのお帰り?お葬式?」と聞くと「まあ、そんなもんだよ」と答える。娘を嫁にやった彼が飲むウィスキーの味は、人生のほろ苦さを感じる味だったに違いない。まるで腸のほろ苦さを楽しむ秋刀魚の味のように。しかし小津自信は、タイトルに深い意味を持たせて付けた訳ではなかったそうだ。「なんとなく」で付けたのだという。それにしても、秋刀魚の味のように、単純に美味しいと思うのが難しい魚の味ってある。魚の味って、本当に難しい。
話は逸れて、ラタトゥイユの話。パリで私がお友達をディナーに招いた時の事。夏だったので、南仏風夏野菜の煮物、要するにラタトゥイユを作ろうと思った。けれど、いつものレシピじゃつまんない。イタリアのアンティパスティ風にしよう、と思ってバルサミコ酢をジャバジャバ入れてみた。冷やして、お皿に盛り、そのままテーブルに出しておいた。ピンポーン、と鳴って、お友達が別のお友達を連れてやってきた。当時の若者にしては珍しく、金髪の髪をピシッと分けて、ジャケットを着ている。一目で良いとこのボッちゃんと分かる、上品で控えめだけど自信のある笑顔。どうぞどうぞと、リビングに通した。みんなが揃うと前菜からスタート。ボッちゃんはピシッと背筋を延ばして着席し、丁寧にナイフとフォークを使っている。内輪のラフな雰囲気にはそぐわない位、丁寧に。私はラタトィユを盛ったお皿を手に取って、「どうぞ回して。自由に取ってね」と隣の人に渡した。「イタリア風にしてみたの」。自信満々に言った。それぞれが自分のお皿に盛り、一口、食べ始めた。みんな一瞬、フォークを持つ手が止まった。ボッちゃん以外は。みんなのフォークを持つ手が止まる程、びっくりする味かしら?きっとびっくりする程美味しい味なんだわ。私も一口食べてみた。私のフォークを持つ手も止まった。ドキッとした、というよりギョッとした。口がひん曲がる程、酸っぱい!とても食べれない!味見をしておけば良かった!私は叫んだ。「やだー!失敗しちゃった!大失敗!ごめんなさい!どうか残して!こんなの食べれないわ〜!」。みんなは、まずいとこそ言わないが、苦笑いを見せて、銘々皿の上のラタトィユを端に追いやった。しかし、ボッちゃんは、にっこり笑って「そんなことないですよ、こんな美味しいラタトゥイユは初めてです」と言う。私が、「まさかまさか。気を使わないで、残してね」とお願いしても、「美味しい」と言い続ける。結局彼は、自分のお皿に盛った分をペロリと食べて、おかわりまでしてしまった。ブルジョワのマナーとは、こういうことなんだ、とその時知った。決して悪く言わない。招いてくれた人を、決して不快にさせない礼儀。でも私は、みんなが帰った後も、ボッちゃんの胃が心配でしかたがなかった。酸にやられてはいないだろうかと。礼儀はどうでもいいから、招待する側としてはむしろ残してくれたほうが心地よい眠りにつけたかも知れない。
そんなボッちゃんを、この夏、ヴィッキーが魚を食べている時に思い出した。つづく。(by Anne)

秋刀魚の味
小津安次郎監督の『秋刀魚の味』のワンシーン。岩下志麻がお嫁に行くシーン。ううう。この写真を見るだけでも、泣けてくる。『極道の妻たち』からは想像できない、純粋なお嬢さん役が観れる。小津安次郎DVDBOX第1集の付録より。5作品6枚組で、23,500円。販売・発売元:松竹株式会社ビデオ事業部

2007年10月22日 (月)

女性の心理/おまけ

エア・ショー
これが航空ショーのワンシーン。趣味の良いチンドンヤ作。ブログ用に送ってきてくれた。
(by Anne)


2007年10月21日 (日)

2007.10.20

昨日のsaboriday。
お友達とレストランでディナーでも、
ハイヒールは休ませて。
(by Anne)
veja
パリで買ったオーガニック・コットン使用のスニーカー『ヴェジャ』。商品企画はフランスだけど生産はブラジル。フェアトレードのところも気に入って。

2007年10月19日 (金)

女性の心理/その2

(つづき。)「航空ショーっていうのあるでしょ、それにこの間、マダムジーザスを連れて行ったのよ。」やはりオネエ言葉だ。日頃憎まれ口を叩いていても案外義母に気を使う彼は、彼女が航空ショーを観て楽しんでくれるかどうか、気になりながら客席に着いたそうだ。ショーが始まり、3機が目の前を勢いよく走り、お行儀よく並んで遠くの空へ向かって飛び立ったかと思ったら、宙返りをしてこちらに戻って来る。また向こうの空高く飛び、宙返りをして、様々なアクロバット飛行をしてみせる。クルクルクルクル宙返りをして、それから赤外線フレアとかいうものを射出して、煙のアートを描いて見せて。それは、驚くほどの技術で、歓声をあげずにはいられないそうだ。隣に居るマダムジーサズの歓声も聞こえる。人一倍大きな声で、子供のようにキャアキャア言っている。楽しんでいるみたいで良かったとライオンギャングは、アクロバット飛行に見とれながらも意識の片隅で安堵したそうだ。3機は空の向こうで宙返りを止めたかと思うと、煙で絵を描きながら、勢い良くこちらに向かってくる。客席すれすれの所まで近寄って来る。観客の歓声はいっそう大きくなった。誰もが70年代のビートルズのコンサート状態で、キャアキャア言っている。飛行機が観客の目の前をサーッと通り過ぎた瞬間、歓声はピークに達した。みんな両腕をいっぱいに延ばして、パイロットにむかって必死で手を振っている。「ここよー!私、ここに居るわよー!」と言いたげに。あのヒーローに、自分の存在をアピールしたい!そんな大興奮の最中、同じ様にキャアキャア言ってるマダムジーザスを見てみると、ただでさえ目立つのに、ヒーローのパイロットに「あなた、素敵よー、ここよー、ワタシここよー」と大きく手を振ってアピールしている。その彼女の手の先に何かヒラヒラするものが見える。その何かヒラヒラするものを懸命に振っているのだ。真っ赤なものだ。まさか還暦祝いにもらった真っ赤なレースの下着じゃあるまいな。ライオンギャングは恐る恐る義母の手の先を見上げた。生ハムだ!パンツではなく生ハム!大興奮の最中、食べるつもりで手に持っていた生ハムのサンドイッチの間から、無意識に生ハムを取り出して、ヒラヒラさせて、ここよー!ってアピールしたのだった。それからというもの、ライオンギャングは考え込んでいるという。なぜ、女性は興奮するとヒラヒラするものを手に持ちたがるのか。その心理が知りたい、と。ちなみに、「お母さん、何持ってるんですか?それ、生ハムですよ」と教えてあげたら、ケタケタ笑って、「あら、いやぁね」と言って、生ハムをサンドイッチに戻し、パクリと食べてしまったそうだ。(by Anne)

ウチの生ハム
奥が生ハム。手前の渦巻き状のものは、腸詰め。独特の臭みがあるので、好みは分かれるが、私はほんの1〜2枚を、ブルゴーニュワインと共に食べるのが好き。ピノ・ノワールのトリュフっぽい香りに良く合うと思う。こうしたハム類を食べる時は必ずピクルスを添えて。パリの実家では、生ハムをメロンとではなくイチジクと一緒に食べています。勿論、残念ながら季節限定。

2007年10月18日 (木)

女性の心理/その1

友達の「趣味の良いチンドンヤ」とその旦那の「ライオンギャング」が軽井沢に遊びに来た時のこと。会うなり二人ともウーン、ウーン呻きながら首をかしげている。「あれは一体どういった心理なんだろうね?」と呟くから、何か大きな悩みを抱えているのだろうと、そっとしておくつもりで外の緑に目をそらした。しかし、ライオンギャングの呻き声は大きくなるばかり。さも何が起こったのかきいて欲しそうだ。「どおしたの?」ときいてみることにした。すると彼は大きく息を吸って、そしてガハッーと大きく吐いて、大きな口を横にいっそう大きく引き延ばし、「いやー、あれはなんだろうね?ビートルズのね、」と言う。なんだ、仕事の悩みかと思ったら、ビートルズか!大した悩みでもなさそうで安心したというより、悩みでさえないようで拍子抜けしたものだから、思わず豆鉄砲をくらった鳩のようなマヌケな表情をしてしまったけど、幸いなことにそのナゾの心理とやらに気を取られているライオンギャングは気付きもせず続けた。「ビートルズのコンサートでね、昔、70年代、女の人達がキャアキャア言って、凄かったじゃない?」と、ワイルドな形相に似つかわしくない柔らかい口調で。正真正銘のヘテロセクシュアルなのに、なぜかいつもややオネエ言葉なのだ。そんなヘンテコなギャップは、うんざりする程モテてきた「趣味の良いチンドンヤ」が初めて男に夢中になった要因のひとつであることは知っている。「キャアキャア言って、もう、興奮状態で、失神する人もいたりして」。そうね、あった、あった、そんなこと、と私は子供の頃にテレビで観たコンサートの様子を思い出しながら頷いた。ライオンギャングは続ける。「興奮状態でパンツなんか脱いじゃって、手に持って、ここよーって振ってね、あれはなんだろうね?」そういえば、下着まで脱いじゃってって話もあったな。私はフフと鼻で笑って終わらせるつもりだった。しかし向かいの大きな口を見ると続きがあるらしい。まだ吐き出していない沢山の言葉をほおばっている。私は今度は身を乗り出して聞いてみた。「で?どうしてパンツを脱いじゃうんだろうって?その心理をを知りたいの?」すると彼は「いや、そうじゃなくて」という返事をして、「『マダムジーザス』なんだよ」と付け加えた。「マダムジーザス」とは「趣味の良いチンドンヤ」の母のこと。パリ仕込みの個性的なファッションと貫禄のある体格、そして奇想天外なユニークな言動と乙女のようにピュアな心で、多くのファンを持つ芸術家だ。「ワタシが若かった頃なんて、銀座をちょっと歩いただけで、男の人がぞろぞろ後ろからついてきてね、当時のどんな女優さんよりも奇麗だって、って。小鳥のさえずりのように透き通った声だって、て。」そんな自慢話は挨拶代わりに毎度聞かされるが、写真を見る限り、そんな程度の自慢話では言い尽くせないくらい、本当に、絶世の美人だったのだ。「昔はほっそりしていたのよ」という彼女の声は、未だに透き通っていていつまでも聞いていたいくらい奇麗だ。昔の可憐なイメージはもう無いけれど、その代わりのエキセントリックな魅力とパワーで、どんな人ごみに居ても、やはり目立つ。なんでマダムジーザスというあだ名になったかは知らないが、デン、としたイメージがなんとなくしっくりくる。「ライオンギャング」は「趣味の良いチンドンヤ」と結婚して、「マダムジーザス」が義母となったなんて、まるでディズニーアニメの家族のような光景だ。まるでアニメと言うか、漫画なのは、その光景ばかりではない。ライオンギャングは話を続ける。つづく。(by Anne)

コーヒーと
軽井沢のお気に入りのカフェ『ばおばぶ』にて。コーヒーと一緒にどうぞと、出してくれたフルーツケーキ。サイコロ位の大きさに小さく切ってある。ケーキをたのむまでもないが、ほんの少しだけ、甘いものを口に入れたい、という客の気持ちをよく理解してくれていると感激。これをつまみながら、ライオンギャングの話を聞いた。

2007年10月16日 (火)

セバスにお熱

私もミーハーなものよ。1年半振りにパリに行って、久し振りに熱をあげた。最終日に、あれよという間に、意図も簡単に、一目惚れ。ディナーが終わると、儘父はワインの続きを飲みながらテレビの前に座ったのが事の始まりだ。今日は面白い番組ないわね、と後ろでザッピングしていた母が言った。彼らが好みそうなドキュメンタリーは放映されていなかったし、騒々しいバライティー番組にも、儘父が「退屈だ」と言うスポーツ番組にもチャンネルを合わせようとしないでいた。すると、儘父が、ちょっと待ってくれ、とつぶやいた。大事な番組が、と言う。何の事かと思ったら、ラグビーフランス大会準決勝だった。冗談かと思った。日頃からスポーツ番組をむしろ軽蔑しているかのような発言が多い(と、言うと本人は否定するだろうけれど)、儘父の、同じ口から出た言葉とは到底思えなかったからだ。母は、ああ、そうだったわね、と驚きもせず、チャンネルをラグビー準決勝に合わせた。フランス対イングランドだ。1年半パリに来ないと、いろんな事が変わるものなんだなあ。まさかウチの両親がラグビーファンになっているとは!私も、10年前にジダンに熱をあげてサッカー観戦を楽しんだ記憶が薄らと残っているくらいだから、積極的にスポーツ番組を観る方ではないし、そもそもスポーツそのものを観たいというより選手を観たいというミーハーな動機だからあまり大声で、そのおぼろげな記憶も語れない。子供の頃は熱心に、しかも純粋に、お相撲というスポーツ観戦を楽しんだというのに。
儘父と母につられて私もテレビの前に座った。他のスポーツには全く見られない風貌の選手達。バッファローの群みたいだ。豪快なタックルが繰り広げられる中、一人に選手に目を奪われた。ネアンデルタール人のような「野蛮」な風貌の選手。ゾクゾクした。一体誰?試合が終わる数分前の事だった。終わりを告げる合図と共に、その『ネアンデルタール人』は、地面に崩れて泣いてるようだった。負けたフランスの選手だったんだな。もう1度顔が観たくて試合が終わってもずっとテレビを観ていたが、結局それっきりになってしまった。翌日私は空港の本屋で、『ネアンデルタール人』が載っている雑誌を隈無くチェックした。セバスチアン・シャバル。29歳。有名なフランスの選手なんですと。うーん!超カッコイイ!隣に座ったら、ドキドキしすぎて窒息死してしまうだろう。
彼のお陰でラグビーをもっと観たくなった。東京に戻って、そう友達にメールしたら、私からのメールだとは信じがたいとド胆を抜いていたようだ。(by Anne)

Tky200710030102
写真:asashi.comより

2007年10月 4日 (木)

シネmemo特報

急いでいるので走り書きにします。押し売りするつもりはありませんが絶対に観てほしい映画2本です。
『ある愛の風景』は、8月15日にこのmemo日和で紹介した『アフター・ウェディング』(10月27日、シネカノン有楽町1丁目にて公開予定)のスザンネ・ビア監督が手がけた作品で、ハリウッドでリメイクが決定したもの。シンプルな日常生活の物語でも、スケールは壮大。もし、やむを得ない事情で大きな罪をおかしてしまったら、その日常はどう変わるだろう?同じようにパートナーに愛されるか?そして同じようにパートナーを愛せるか?11月下旬より、新しくオープンするシネカノン有楽町2丁目にて公開予定。とにかく私は、この監督の作品を観て、後悔をしたことがない。
『明るい瞳』こちらは10月12日までシアター・イメージ・フォーラムで上映中。早くしないと終わっちゃう!少しヘンテコな女の子が森でキコリと出会って幸せを知る、といったチャーミングな大人のおとぎ話。DVDになったら、多分買うだろうというくらい、好きな作品。
(by Anne)

ある愛の風景

明るい瞳

2007年10月 2日 (火)

オコリンボ

月に一度のレディース・デイズのせいよ、ってことにしておこう。私は時々、ブリブリブリブリ怒ってることがある。いったん頭に血が上ると、どんどんカッカッして、口はヘの字に、鼻息は荒く、肘を張り出して、ブリブリ怒り、クールダウンの術もなく、次第にスカートの皺や本の並び方まで、とにかくなんでもかんでも気に入らなくなる。一体何で怒っているのかさえも忘れてしまっても、なお。しかし、そんなオーバーヒート寸前の私が、一気に機嫌が良くなる魔法があった。それは、オーストラリアにロケで行ったときの事。私の撮影だけ早く終わったので、先にホテルに戻って休もうとした。炎天下だったから結構疲れていたみたいで、早くシャワーを浴びて横にになりたかったのだ。ホテルに入ると、大きなホールがあって、フロントは遥か彼方にデンとある。マンモス・ホテルだ。私は怠さを、もう少しだからねと励ましながら、フロントに辿り着いた。鍵を受け取り、今度はまた遥か遠くのエレベーターまで、歩いた。エレベーターでかなり高い所まで上り、降りると今度は目の前に長い長い廊下がある。その突き当たりにある私の部屋まで、気が遠くなりそうになりながら歩いた。ようやくドアの前に着き、カード式の鍵を差し込んだ。ふう。やっとこれで休めるわ。と思ったのも束の間、ドアは開かない。エラーランプばかりが点滅している。空かさず、カーッと血が頭に上った。エントランスからホール、フロントからエレベーター、そして長い長い廊下。客にこんなに歩かせて、それで開きませんなんて、けしからん!私は口をヘの字にして、鼻息を荒くして、肘を張り出し、元来た長いルートを、先ほどの怠い足取りとは打って変わったスピードで引き返した。エレベーターが一階に下りドアが開くと、鼻からプシューと息を出し、行くわよ、と汽笛を鳴らし、ブリブリブリブリ、機関車のようにフロントに突進した。最高な嫌みで最高に感じ悪く、クレームを言おう!しかし、ここはオーストラリア。英語で巧みな嫌みなんてとても言えない。くそぉー。仕方なく私は、カード式の鍵を振り上げ、出来る限り怖い顔をしてみせ、出来る限りの低い声で、「イットゥ、ダズントゥ、ウォーク」と言った。しかし、フロントの兄ちゃんは怖じ気付きもしない。蔓延の笑みで軽々しくsorryと言い、私に別の鍵を差し出した。微笑み返してやるもんか!本当に怒ってるんだから!と瞳を目の隅に押し込んで、睨んでみた。そしてまた部屋までの長いルートを辿らなければならなかった。部屋に入り、やっと、ベットの上で横になれたと思った途端、ブザーが鳴った。穴から覗くとホテルマンが立っている。なに?またなにか?ドアを開け、私はまたもや怖い顔を作りホテルマンを見上げた。「先ほどは失礼しました。これ、チョコレートです。お召し上がり下さい」と差し出された。私の顔が見る見るうちに綻んだ。ホテルマンは私のその、現金というより単純な態度をしっかりと見て、帰って行った。ドアを閉めると、早速包みをビリビリ破いてチョコレートをつまんだ。うーん!美味しい!すっかり機嫌は直っていた。美味しい食べ物さえ与えられば文句なし、ダ!(by Anne)

MasLaval 2004
先日、ブリブリ怒っていた私に、下戸の主人がカンで選んでプレゼントしてくれたワイン。美味しいものを目の前にすると、ケロッと機嫌が直るのは我ながら不思議だし、主人も既に十分把握しているようだ。原産地統制名称ワインではないが、ピノ・ノワールベースのブレンドで、南仏にありがちなボテッとした味わいに仕上がっていなくてエレガント。酸味も渋みもまろやかで、優しいビロードのような味わいに、心も穏やかに。Mas Laval 2004。ヴィノスやまざきにて4500円。

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