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2008年4月30日 (水)

甥も、芋も/その1

案外日常生活では、明確な説明をしないでも、アレだとか、ソレだとか言って、通じ合うケースが多い。見ず知らずの相手では、そんな曖昧な言葉選びでは通じづらいだろうけれど、家族内、仲間内、同業者同士、とかならアレソレレベルのやり取りで恐ろしい位理解しあえちゃうこともある。例えばそれは忘れもしない、とあるショーのオーディション帰りのこと。オーディションを終えて、私はモデルのAちゃんと駅まで歩いていた。すると正面からモデルのBちゃんがこちらに向かって歩いて来る。夕方、一人で、ブックを抱えて、ミニスカートにヒール姿。オーディション姿だ。私達が行ってきたばかりのオーディションに行くんだと、分かる。近づいてくるとお互い手を振った。「ひさしぶりー!」、「元気ー?」。そして次に、Bちゃんは「どんな感じ?」と私たちに聞き、私は「でも全然大丈夫ー!」と答えた。Bちゃんは「オッケー」と納得して、そのままオーディション会場へ向かった。数分後、私はふと、Aちゃんに「『全然大丈夫ー』で通じ合ってるのもスゴイよね…」と囁いた。
このやり取りを聞いて、きっと多くの人は、こう解釈するだろう。
「どんな感じ?」。これはつまり、オーディションが、厳しい感じなのか、リラックスした感じなのか、いろいろと要求されるのか、それともサックリと終わるのか、など状況を知りたい、と。「でも全然大丈夫ー!」。これはつまり、少し固い雰囲気で、少し要求されるけど、心配するほどではない、と。
ところが、私たちの間で理解しあった内容は、以下の通りだったのだ。
「どんな感じ?」、「でも全然大丈夫ー!」。つまり、「モデルがいっぱい来ていて、混んでる?」、「けっこう混んでるけど、展開は早いから、そんなに待たないですぐ順番が回ってくるよ」、ということなのだ。この暗号のような秘密めいたやり取りをしたことに、オーディションの結果はどうであれ、私は少し浮かれて家路についた。
同業者や親しい間がらなら、どんな言葉でも通じ合える。この日を境にそう確信してきたが、先日の電話でその確信は崩れ去った。友人のお母様からの電話だ。たまに思い出したように電話を下さり、むしろ私の方がご機嫌伺いの電話をしないといけない立場なのに、とやや恐縮しながらも、ありがたく思って暫しの会話を楽しむのだが、今回はチンプンカンプンだった。つづく。(by Anne)

霧の碓氷峠
四月末、真夜中の碓氷峠。重厚な霧が私たちの車に覆いかぶさって来る。時速30キロ以下で走る車の、微かな赤いライトの後ろを、そろりそろり走る。何度も通った道だけに、記憶を頼り、なんとか峠のカーブをかわした。この道が初めてだったら、まさに五里霧中だろう。辺りの様子は全く分からない。オーディション帰りのモデルの会話が全く分からない、といったように。

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