シネメモ2008年初夏/その1
『881 歌え!パパイヤ』(8月9日よりユーロスペースにて公開予定)。試写状に魅了されて、なんだか分からぬまま観に行ったシンガポール映画。試写状は、赤や黄色の色使いで、めちゃめちゃ明るくて楽しい雰囲気を漂わせ、すごいパワーがもらえそうな、とにかく元気になる、そんな作品なんじゃないか、と思ったからだ。まるで東南アジア版ピンクレディー、といった2人の女の子のポートレイトのまわりには、「ウワッ!すごいっ!」、「ガーリー・パワー炸裂」の「トロピカル・エンタテイメント・ムービー」、「衣装200着!」、「ド肝を抜く歌と踊り」、などというワクワクする言葉が、それこそ炸裂している。おまけになんとシンガポール国民の10人に1人が観たという、2007年シンガポールNo1の大ヒット作品だとういう。観てみたら、本当だ。本当にその通り。スターを夢見る2人の美少女が、様々な困難を乗り越えつつ、成功するまでのシンデレラストーリー。ユーモアあふれる会話や心に滲みるシーンもあって、なかなか観応えがある物語になっていると思うのだけど、それ以上に、もう、なによりも、2人の歌と踊りと衣装と化粧と、表情がすごいのだ。一旦、彼女達が歌いだしたら、もうそこは、ボロ家だろうと、路上だろうと、まるでムーランルージュのフレンチカンカンのような華やかさに包まれる。いや、もっとパワフル。いや、なんだか観たこともない姿に、息をのんで、もう、うっとり。気がつけばエンディングロールが流れているのだ。あと、面白いのは、シンガポールの他民族性が反映されているところ。知らなかったのだが、この小さな国はマレー語を国語とし、英語(といってもシングリッシュという北京語と英語が混ざったもの)を公用語としているそうだが、(って聞いても、どうなちゃっているの、って感じだけど)、この映画の中で頻繁に飛び交う方言のような福健語(ふっけんご)が映画で使われるのは、この作品が初めてだという。それだけでも、アジアの交差点であるシンガポールのコスモポリタンなパワーが、グワッと押し寄せ、私は大興奮なのである。(by Anne)
『881 歌え!パパイヤ』/監督:ロイストン・タン、配給・宣伝/マジック・アワー+チャンネルアジア。8月9日よりユーロスペースにて公開予定。www.881movie.com