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2008年7月18日 (金)

夢が見た夢/その1

パリの継父の周りには、数多くの芸術家や作家がいて、みんなそれぞれ相当、変わり者というのが失礼であればエキセントリックで、印象に残らない人はいないが、なぜか2度しか会ったことのないジャンの話は頻繁に思い出す。ジャンとは、ニューヨークに住むジューイッシュ系の画商。主にマックス・エルンストやドロテア・タニングなど、シューレアリストの作品をコレクションしているだけあって、『夢』というテーマには執着があるらしい。儘父が「忘れもしない」と言って、何度も何度も私に聞かせてくれた彼のジョークは、夢にまつわる話だった。そして私のユダヤ系ユーモア好きは、そこから始まったのかもしれない。
「知ってるか?この話。ニューヨークのアップタウンのとある寝室で、若くて美しい白人の女性が眠っていた。かわいそうに彼女は大きなベットでひとりきりだった。早くに亭主に先立たれたからだ。枕元のランプの薄明かりが彼女の真っ白な肌を照らしていた。辺りはシンとしていて、彼女のかすかな呼吸が聞こえるくらいだった。しばらくして突然、ミシッと小さな音がした。眠りが浅い彼女は、その音に気がついた。何かしら?ミシッ。また聞こえてきた。寝室の向こうの廊下からだ。足音のようだ。ミシッ!ミシッ!その音はゆっくりと近づいてくる。誰?!どうしましょう!!!彼女はジッと廊下に続く寝室のドアを見つめた。どうしましょう!!!いよいよ、ドアのすぐ向こうまで足音が近づいた。ギーッ。ドアノブがくるりと回り、ドアが半分開いた。黒い人影が!見開いた大きな目がふたつ。人影は部屋へ侵入した。黒人の大男だった。2メートルはあるだろう。肩から胸にかけての隆々とした筋肉、真っ黒に光る肌。どうしましょう!逃げられない!!!大男は彼女の寝ているベッドへ膝をかけ、大木のような股で彼女をまたぎ、グローブのような手で彼女を掴んで襲おうとした。彼女は思わず叫んだ。ありったけの声を張り上げて。『なんて恥知らずな!どうせ、どうせ、あんた達黒人のすることなんか!あんた達のすることなんか汚らわしい!下等よ!恥を知れ!』…。彼女は金色の髪の毛を振り乱し、叫び続けた。すると大男は低い落ちついた声で、ゆっくりと、彼女に向かって言った。『そうは言っても、これはあなたの夢ですよ、マダム』と」。つづく。(by Anne)


夢のまた夢


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