お行儀の基準
先日ワインスクールの旧クラスメイト&現在ママ友2人と自由が丘でランチした。
1人は生後3ヶ月の赤ちゃんのママ。もう1人は妊娠7ヶ月目。今までの、夜、ワインを片手に、のおつきあいはしばらくお休み。だもんで昼、ミネラルウォーターを片手に、となったわけだが、また新しいお友達ができたみたいに新鮮だった。
子育て話や妊娠話、出産ドラマなどで盛り上がってる最中に、3ヶ月のママが、あ、そうだ、と言って、大きなヴィトンのバック(ママバックがヴィトン!と一瞬心の中でビックリマークが弾けたのも束の間)から、包みを取り出した。私への、というか、ウチの子へのプレゼントだと言う。
私は嬉しくなって、「わあ、開けていい?」と聞いてから、すぐにベリベリと包み紙を破いて中の物を取り出した。2枚のタオルだった。ウサギさんのアップリケがついている。よく見ると、下の方にウチの子の名前の刺繍が入っていた。
「わあ、かわいい!ありがとう!刺繍の名前まで入れてくれたのね、嬉しい!」
私は即、横に居たウチの子にそのタオルを握らせた。大のタオル地好き。すぐにニギニギしはじめたのだった。
数時間後、彼女達と別れて家でホッと一息ついていると、昔の事を思い出した。
12歳頃だったか、クリスマス前のバレエのレッスンの後の事。先生が生徒みんなにプレゼントを配った。私は、この時も「なんだろう」とすぐにベリベリと包み紙を破り、中の物を取り出した。革細工のブックカバーだった。異国情緒あふれる少し大人びたプレゼントに、私の心は踊って「わあ、きれい!」と大きな声で喜んだ。すると周りの女の子達は私の方へ寄ってきて、「何だった?」、「ねえ、何だった?」と私の膝の上の、破れた包み紙の中を覗き込んだ。みんな自分のプレゼントを見れば良いのに、なぜ包みを開けないのだろう、と私は不思議に思った。すると後ろから夜会巻きを結ったバレエの先生の、ピシッとした声が聞こえた。
「あら、アンヌさんたら、もう開けちゃったの?ホホホ」
いじきたないわね、といわんばかりの「ホホホ」だった。私は自分の行動を恥じた。急に押し黙って、顔を赤らめながら、迎えに来た母の車に乗った。
車に乗ると母は、「あのプレゼントのことだけどね」と切り出した。すぐに包みを開けては行儀が悪いと、しかられるのだろう、とビクビクしていた。ところが、全く逆だった。「先生はああ言ってたけど、良いのよ。直ぐに開けたって。フランスでは、すぐに開けて、喜びをすぐに相手に伝える事が大事なのよ。」
すぐに開けるフランスの文化と後で開ける日本の文化。そのどちらが正しいとかいう話では当然ないが、母はプレゼントを受け取る時の作法として、率直に喜びを伝える後者の文化の方に共感を抱いていたようだった。それ以降、頂き物をしたら、堂々と包みを破るようになったのだった。勿論、喜びの証という称号を胸に。
というわけで、私はランチの最中に2枚のタオルを広げたのだが、ママ友2人の方は、お行儀良く日本式。私が彼女達に渡した包みは、破られることなく、きちんと鞄の中にしまわれたのだった。
(by Anne)