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2013年11月 5日 (火)

我が家もアメリカひじき

まさか自分が「アメリカひじき」を食べることになるとは思わなかった。

野坂昭如の短編『アメリカひじき』に、アメリカ軍の落下傘がたまたま近所に落ちて、見てみると生活用品や食料の箱で、それを町のみんなで分け合ったという話がある。

箱の中には、砂糖やチョコレートなど当時の日本人にとっては宝のようなものが詰まっており、それに紛れて、縮れた黒い糸くずのようなものも入っていた、とある。

アメリカ産のひじきだと思い込んだ主人公の母が、煮てみると煮汁が赤く染まったので、アメリカ産のは灰汁が強いんだと何度も水を取り替えて、塩で味付けして食べたそうだ。

その味わいは、もの凄く不味かった、と。

後に、このアメリカひじきたるものが、紅茶葉だったと分かったそうだ。

出涸らしを食べてしまった、というわけ!

そりゃあ、不味いでしょ、と思わず笑ってしまう大好きな話だ。

その話はさて置き、今度は非常識の話。

私が子供をもつことになるずっと前のある晩のこと。

私は親戚の家に、夜の10時半に電話をかけた。

確かに遅い時間だ。

電話をかけるのを少しためらったが、急ぎの用だったし、謝れば良いかな、という甘い気持ちだった。

「もしもし。こんばんは。アンヌですけど、遅い時間にごめんなさい。今大丈夫ですか?」

一応気を使ったつもりが、相手は無言。

一呼吸おいてから、挨拶があるのかと思えば、「何時だと思ってるの?」から始まる、私がどれだけ非常識かの長いお説教が始まった。

まぁ、確かに遅い時間に電話をかけた私が悪かった。

それにしても、夜中の12時でもないし、と腑に落ちない気持ちも正直あった。

ところが、私自身がいざ子持ちになると、夜の10時半はおろか、9時、もっというと、8時半でさえ電話をかけてこられると、ムッとしないではいられなくなった。

子供を寝かしつけようと必死に戦っている、戦場のような時間帯に電話をかけてくるなんて、なんたること。

非常識にも程がある!

私もかつての親戚さながら、お説教したい気持ちになるのは、恐らく小さな子供をかかえる親なら、共感してもらえるだろう。

有り難い筈の宅配便の「ピンポーン」でさえ、お断りしたいくらい。

やっと寝付いた矢先のピンポーンは、子供にとっての目覚まし時計のごとく。

また1から寝かしつけのやり直しをさせられるはめになるのだから、落胆する。

せっかく掴んだ蜘蛛の糸を途中で切られるようなものだ。

入り口に「呼び出しベルは鳴らさないでください」と張り紙をしたこともあった。

というわけで、夜の電話は非常識と思う部類の人間に、手のひらをかえしたように変わった私。

携帯電話のメールの着信音でさえ、あーあ、今送らないで欲しかった。。。と呟く時もある私。

それくらい、ウチの子は寝付きが悪い。

先日も、中々寝ないウチの子に添い寝をして、しめしめ、もう少しで寝てくれる、とホッとし始めた途端、ブルブルとメールの着信音が鳴った。

バイブレーションとはいえ、この時間帯のブルブルは爆音だ。

この時も、「子よ、どうか目を覚まさないで!」という願いと、

「まったくけしからん!非常識だ!」という腹立たしさと、重たい眠たさが混ざった複雑な気持ちで携帯をチェックした。

親友からだ。

お互い仕事と子育てで慌ただしく、なかなか会えない、別名「スポ根アイドル」。

非常識と思ったけれど、やっぱり大切な親友だしと、頑張って返事を打った。

「元気?来月こそは会えるかな?私も時間調整してみるね。

夏にフランス行った時のお土産、チョコレートと紅茶だけど、なかなか渡せなかったから食べちゃったよ、ごめんね」。

我が子を起こさないように急いで打ち終えて寝てしまいたかったから、「チョコレートは食べて、紅茶の方はウチで飲んでしまおうと思って、缶開けちゃったよ」などと長文にはせず、できるだけ略文で送った。

しかし、どうやら略しすぎたようだ。

翌日、驚いたメールが返信されてきた。

「えええ!!食べちゃったの?紅茶も?ウケるぅ~!」と。

私は「そうですとも。貴重なアメリカひじきですから。」と返事しておいたのだ。

(by Anne)

Img_1925

我が家の「アメリカひじき」ならぬリプトンのオレンジ・ティー。

紅茶派か、コーヒー派かに別れがちだが、私は紅茶派。

日本ではなかなか入手できないこの貴重なリプトンのオレンジ・ティーは、私の朝食の定番です。

ちなみに、亡き父に影響されて、妹はラプソン・スーション派。午後の紅茶とされますが、朝から500ミリリットル飲んでます。

でも、親戚は、香りのついた紅茶は邪道だと、ダージリング贔屓です。

亡き祖父も、ダージリングでないと紅茶じゃないと断言していました。

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