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2007年9月 6日 (木)

チャマのおまじない/4

(つづき)あれ?って思ってると、バイクタクシーの兄ちゃんがクメール語で何か言ってる。どうやら降りろと言ってるようだ。言われるがまま、降りた。兄ちゃんもバイクから降りて、ニコニコしながら何かを言い続け、バイクを押し始めた。バイクが故障したのだろうか。とにかく後からついて歩き始めることにした。気がつくと、私たちの仲間のみんなはとっくに行ってしまったようで、陰も見えない。妹さえも、後ろを振り向いて私たちの様子を伺うことはしなかったようだ。人でなし!とチャマは思っただろう。さっきから、誰も戻って来る様子がないのを悲嘆したり、バイクのガソリンなどをチェックして悪い所を探ってみたりして、ブツブツ言ってる。私は呆然としていたから、チャマの話をふーん、だの、そうだね、だの、どうでも良い返事だけしていたと思う。それにしても、真っ暗だな。この満月がなかったら本当に真っ暗だな。辺りは民家さえない水田で、虫の声とバイクのエンジンとチャマの独り言しか聞こえない。どれだけ歩けば家に辿り着けるのかな。ここまでけっこう距離あったものね。日が沈んだばかりの水田に囲まれているせいか、霧のような蒸気が月光に照らされて、立ち上る様子がミステリアスだ。しばらくすると、その蒸気の向こう側から人影が、一つ、二つ現れ、次第に増えて、10人位の男がこっちに近づいてくるのが分かった。そういえば、ガイドブックに治安が悪いって書いてあったな。この人たちに何かされるのかな。私はウエストポーチをギュッと握りしめてみた。しばらくすると、彼らは、ワイワイとお喋りしながら私たちの横を通り過ぎていった。なんだ。なんでもない。でもこんなところで何かあったら大変そうだな。なにせ、月明かりが頼りの真っ暗闇で、辺りは何もない水田地帯だもの。水田地帯…。さっき日が沈んだばかり…。あ!私は急に慌てた。大変だ!きっと蚊がたくさんいるに違いない。刺されたら大変だ!痕になりやすいんだから、気をつけなきゃ!私は慌ててウエスト・ポーチのジッパーを開け、虫除け用のウエットティッシュを取り出し、腕や足に塗り始めた。あ、そうだ、チャマも使うかな。「ね、ね、虫除けいる?」チャマに聞いてみた。すると一秒も空かさず罵られた。「え!何言ってんの!呑気に、まったく!もう、虫除けじゃなくて、魔除けが欲しいわよ!」と。どうやら、歩き始めてからずーっと、私があーじゃの、こーじゃの考えている間ずーっと、チャマは恐怖に晒されていたようだった。ガイドブックを熟読し、その中の「治安とトラブル」の4ページを暗記し、そしてたくさんの怖い小説を読んで得た、それはそれは恐ろしい妄想の世界が繰り広げられていたのだろう。少々の不安も吹っ飛び、私は笑った。笑ってる私を見て、チャマはさらに腹を立てて言った。「本当に怖いんだから!」。(by Anne)

私の魔除け
それからというもの、私は「魔除け」というものが気になり出した。「魔除け」とは一体どんなものだっけ?
ある日、友達の『趣味の良いチンドンヤ』からアトランタ土産をもらった。真っ赤なクッションにコカ・コーラのボトルが詰め込んである、奇妙な物体だ。「冷蔵庫にぶら下げたりするとカワイイわよ」、と人差し指を立てる彼女に、私は眉をひそめた。そんなの、邪魔くさいだけだわ。使い道に困ってしばらく放置しておいたが、引っ越しと共に良いことを思いついた。魔除けにしよう!なぜなら、『趣味の良いチンドンヤ』はどんな悲劇も笑いにすりかえる達人だからだ。今、ウチの玄関には、この奇妙な物体がぶら下がっている。魔除けとして役に立っているかは分からない。でも、チャマが夜道に握りしめる携帯と同じ作用はあるかもしれない。なんとなく安心だ、という作用。私もとうとう、おまじないにハマッたようだ。

2007年9月 4日 (火)

チャマのおまじない/3

(つづき)妹、妹のフィアンセ、それから数人の友達も一緒に、とっておきのサンセットを見に行くことになった時の事だ。遺跡の影から臨む夕日と朝日は、とにかく壮大で神秘的。訪れた人々の心に一生残る体験、と断言できるくらい素晴らしい。それだけに、アンコール遺跡の中には、サンセット・ポイントやサンライズ・ポイントがいくつもあって、一般的にはアクセスしやすいプノン・バケン山や、メジャー観光スポットのアンコール・ワットから夕日や朝日を臨む。私とチャマはすでにメインの寺院は観光し終わっていたから、その日は少し遠出をしてバイクで45分位かかるプレ・ループに行こうということになった。ピラミッド式の寺院で、中央祠堂からの眺めの良さでも知られている所だ。日が傾く4時半頃だったかに、プレ・ループの入り口でみんなと待ち合わせて、ロック・クライミングさながら、這いつくばるようにして寺院の頂上をめがけた。一旦頂上に着くと、目の前には広々としたカンボジアの景色が広がり地平線さえ見えるのだ。私たちは日中の日差しを吸収して暖かくなった寺院の石に腰掛けて、日が傾くのを待った。日がゆらゆらと、うす雲ではっきりしない地平線の後ろへ沈んでいき、寺院に刻まれたリリーフが浮き彫りになり、それから赤紫の淡い光が雲に残っているのを見届けた。ふぅ、と、うっとりしてため息をついた頃になって、やっと辺りが暗くなったのに気付いた。さ、もう帰らなきゃね、と思った途端、後ろからパッと大きなスポットライトがついて、寺院のリリーフが照らされた。アンコール遺跡の中はイリュミネーション禁止なのに、変だな、と思って後ろを振り向いた。そこには、大きな満月があった。私たちをジッと見下ろしているかのような貫禄だ。デザート付きのフルコースを食べたような満足感を味わって、私たちは寺院の麓に降りた。真っ暗になってもまだ、数人のバイクタクシーの兄ちゃんがお客を待っていた。長期滞在していた妹達はみんな自分のバイクで来ていたから、チャマと私だけ、バイクタクシーで帰ることになった。カンボジアでは、バイクに3ケツするのは当たり前。5ケツだってよく見かけた。なので、私たちも運転手の後ろに乗って、3ケツした。「じゃ、行くよ!」と仲間の誰かが言って、バイク5〜6台みんな一斉にブンブーンと、走り出した。私たちのバイクタクシーも、後についてブーンとスタートした。最初のカーブをみんな勢いよく回って行く。私たちのバイクタクシーも勢いに乗って、いざ回ろうとした時、いきなりスピードダウンした。つづく。(by Anne)

sun set
夕日にうっとり。